橋本病と私

3.それでも進む、光を探す道【後編】

主治医は語り始めました。

「甲状腺ホルモンは、体の代謝だけでなく、心の状態にも深く関わっています。甲状腺の機能が低下すると、疲れやすさや意欲の低下、集中力の散漫などが現れることがありますよ。これがいわゆる『抑うつ状態』のような症状です。」


私の抱えていた不調は、まさにこの甲状腺機能低下症の進行によって引き起こされている可能性が高い。

主治医は、そのことを分かりやすく説明してくれました。


そして、私の目を見て、静かに、しかし力強い言葉をかけてくれたのです。

「つらかったですね。よく今まで耐えてこられました。これからは私が責任をもって診ますから、安心してくださいね。もう大丈夫ですから。」

その瞬間、全身の力が抜けるのを感じました。

夫の支えはあったものの、心身の不調は私をじわじわと蝕み、この先どうなるのだろうという不安が常にありました。

そんな重い気持ちが、先生の優しい言葉で、ふわっと軽くなった。やっと、信頼できる人に巡り合えた。そう感じ、心底ほっとしたのです。


まさか自分の心がそんな状態だとは、それまでの私は夢にも思っていませんでした。

ただ目の前の「やるべきこと」だけを追いかけ、懸命に前を向いているつもりでした。

自分の心を、きちんと手綱で引き締め、コントロールできていると信じていたのです。

でも、それができていなかった。だから、あんなにもしんどかったんだと、ようやく自覚しました。


信頼できる医師との出会いは、私にとって、暗闇の中に一筋の光が差し込み、本格的な治療への道筋をそっと拓いてくれたようでした。

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